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所得税の確定申告4 分離課税
分離課税には源泉分離課税と申告分離課税があります。
源泉分離課税は、収入から直接徴収して他の所得と分離して課税するものです。
預貯金の利子や上場株式等に係る配当所得等、源泉ありの特定口座内で行う上場株式等の譲渡所得等などが対象です。
このうち、上場株式等に係る譲渡所得等や配当所得等は申告することも可能です。
既に源泉徴収で課税が終わっているのに何故かって?
それは前年以前の譲渡損と差引したり、他の特定口座との通算で源泉された税金を還付してもらうことができるからです。
申告分離課税は、土地建物等の譲渡、上場株式等に係る配当所得等(申告不要もあり)、上場株式等に係る譲渡所得等(源泉なし)、一般株式等に係る譲渡所得等、先物取引の事業所得・雑所得、山林所得、退職所得があります。
こちらは申告時に総合課税の所得や他の分離課税の所得と分離して税額を計算します。
退職所得も退職所得控除額を超える部分は源泉徴収されますので一年に複数の退職所得がなければ申告は不要な場合が多いです。
但し、「退職所得の需給に関する申告書」を会社に提出していない方は20.42%(復興特別所得税含む)で源泉徴収されていますので申告が必要です。
基本申告不要の退職所得で源泉徴収された税額が戻る場合があります。
総合課税で引ききれなかった所得控除額がある場合
総合課税の損失と退職所得を損益通算できる場合
損失の繰越控除を退職所得から控除できる場合
損益通算、損失の繰越控除ともに通算・控除の順番が決まっているので注意が必要です。
数年前、無料相談の当番だったときにある老婦人がお友達の言葉としてこんなことを言っておられました。
一生懸命に事業をして懸命に働いた結果、税率は総合課税のためすごく高くなったのに、
株式を売って儲けている人はどんなにたくさん設けても20.315%(復興特別所得税含む)だけなんて!と。
もしかしたらその頃は10%だったかもしれません(;’∀’)
景気対策等で上場株式等の譲渡益や配当所得等に対する税率は一律ですので、超過累進税率の総合課税より有利になることがあります。
なんだかなぁ….と思っておられる方もありますよね。
個人所得税は所得の種類、所得それぞれの計算方法や申告不要制度などとても複雑です。
今回4回にわたって書いてきましたが書き足りないというか、説明しきれないとういうか。
説明すればするほど難しい言葉になってしまって(汗)
自分の場合はどうなの?
気になる方は是非ご相談ください。
税理士 松井千春
2017,2,21
所得税の確定申告3 総合課税の税率
前回までにご紹介した「総合課税」とは、その名のとおり所得を総合して課税するものです。
そして、総合された所得から所得控除を控除した金額に税率を掛けるのですが、この税率が「超過累進税率」です。
税率は5%~45%まで段階的に高くなります。
4,000万円を超えたからといって、すべての所得が45%になるわけではありません。
上図のように階層ごとの税率を適用し、4,000万円を超えた部分が45%が適用されます。
でも階層ごとに税率を掛けていくのは大変なので速算表があります。
以下、国税庁のタックスアンサーより
総合所得が大きくなると税負担が大きくなって大変なんですよね。
この総合課税とは別に「分離課税」の所得があります。
これは、租税負担の軽減や経済対策などいろいろな理由で、他の所得は分離してそれぞれに定めた税率を適用します。
分離課税についてはまた後日。。。
税理士 松井千春
2017,2,19
所得税の確定申告2
前回の一覧表は、所得とその計算の仕方、所得控除とその計算の仕方又は金額について28年分の所得税の確定申告用となっておりますのでご注意ください。
平成29年分からは医療費控除に改正が入っていますし、配偶者控除についても平成30年から改正されそうです。
また、所得の説明は総合課税といって、その人の一年間の所得を合算して計算するものだけとなっています。
実際の申告時には分離課税といって、総合課税とは区別して税額を計算するような所得も計上しなければならない場合があります。
分離課税の所得の種類等についてはまた後日に書くことにします。
今日は、前回の表に記載した※印の解説とその他の補足をしたいと思います。
※1 利子所得については、国内の預金も利子所得です。でもこの利子所得は源泉徴収といって、収入から直接税金を控除するシステムになっています。
通帳に振り込まれている利息は既に税金を払った後になるわけです。
この利子所得で源泉徴収制度の対象のものは確定申告をすることはできない決まりになっています。
※2 総合課税の特別控除について
特別控除額は50万円です。
1年のうちに短期譲渡と長期譲渡があった場合には以下のように控除します。
例⑴短期の譲渡益が50万円を超える場合
①短期の譲渡益70万円-50万円=総合課税の短期譲渡所得の金額20万円
②長期の譲渡益50万円 =総合課税の長期譲渡所得の金額50万円
例⑵短期の譲渡益が50万円以下の場合
(短期の譲渡益30万円+長期の譲渡益30万円)-50万円=総合課税の長期譲渡所得の金額10万円
つまり、短期の譲渡益から先に控除するんです。
それと、控除という言葉は引ききれない場合はその金額までということです。
短期の譲渡益が20万円、長期の譲渡益が10万円あったとします。
譲渡益の合計が30万円<50万円の場合は30万円となります。
総合課税の特別控除に限らず控除とつくものはすべて同じです。
それと、総合課税の長期譲渡所得の金額ですが、他の所得と総合するときに、その1/2が課税の対象になります。
長期保有のものを譲渡した方が税金の負担が軽くなっています。
総合課税の譲渡所得ですが、譲渡(売買)をしたら何もかもを申告しなければならないわけではありません。
生活に通常必要な動産(例えば通勤用などの車、家財道具類)は課税の対象ではありません。
貴金属類やクルーザー、ヨット、事業用の車などが対象となります。
※3 一時所得の特別控除額も50万円です。
一時所得も臨時の所得なので税負担の軽減があり、総合課税の長期譲渡所得と同様に一時所得の金額の1/2が課税の対象になります。
※4 所得の合計を計算する際には以下のような決まりがあります。
損益通算
すべての所得が黒字の場合は合算すればいいのですが、不動産所得、事業所得、山林所得(これは分離課税です)及び譲渡所得の金額の計算上生じた損失は一定の法則により他の黒 字と相殺することができます。ただし、上記の所得であっても内容によっては損益通算の対象とならないものもありかなり複雑です。
事例で解説しようにも誤解を与えてしまってはいけませんのでここでは割愛させていただきます。
総合課税の長期譲渡所得、一時所得の金額を1/2にするのは損益通算後になります。
損益通算の結果、損失の金額が残る場合は、その残った金額の合計額を「純損失の金額」といい、翌年以降へ繰り越し又は前年へ繰り戻しすることができます。
繰越損失の控除
前年以前3年間に生じた雑損失や純損失で前年までに引ききれなかった金額を一定の順序に従って、今年の所得から差し引きしていきます。
引ききれない金額は翌年に繰越せますが4年を超えて繰り越すことができないので、25年分の損失が28年で引ききれなかった場合はその金額は繰り越せません。
上記を適用した結果を申告書の合計欄に記載します。
用語の解説
◇合計所得金額
扶養控除や配偶者控除などの判定に使用するものですが、次の①から⑦までの合計額になります。
① 純損失又は雑損失の繰越控除、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除及び特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除を適用する前の総所得金額
② 分離課税の土地建物等の譲渡所得の金額(特別控除前)
③ 分離課税の上場株式等に係る配当所得等の金額(上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用前の金額)
④ 分離課税の一般株式等及び上場株式等に係る譲渡所得等の金額(上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除又は特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除の適用前の金額)
⑤ 分離課税の先物取引に係る雑所得等の金額(先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除適用前の金額)
⑥ 退職所得金額
⑦ 山林所得金額
◇総所得金額の合計額
雑損失、医療費控除、寄附金控除の計算などに使用します。
合計所得金額に純損失・雑損失の繰越控除、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除及び特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除、特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除、先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除などの適用がある場合には、それらを適用して計算した金額をいいます。
※5 医療費控除を適用する際に、支払った医療費-医療費の補てん金額から控除する金額は次の金額のうち少ない方の金額となります。
①総所得金額の合計額×5%
②10万円
例)合計所得金額が100万円の場合、100万円×5%=5万円<10万円 ∴ 5万円
この場合、5万円超の医療費(補てん控除後)があれば、控除額の5万円を超える部分が医療費控除の対象となります。
つまり合計所得が200万円以上の場合は一律に10万円となるため、医療費(補てん控除後)が10万円を超えなければ医療費控除の対象にならないわけです。
税理士 松井千春
2017,2,17
所得税の確定申告
個人の所得税の確定申告シーズンですね。
分かりやすいようにと表にまとめてみました。でもやっぱり複雑です!
次回以降に、※印の分も含めてもう少し解説をしていきます。
項目 | 所得の説明(主なもの) | 所得の計算方法や金額など | |||
所得 | 事業 | 営業等 | 商店の経営、医師・弁護士などの自由職業、漁業など | 総収入金額-必要経費 | |
農業 | 農業 | 総収入金額-必要経費 | |||
不動産 | 貸家、貸事務所、アパート、貸ガレージなど | 総収入金額-必要経費 | |||
利子 | 国外の銀行に預けている預金の利子など※1 | 収入金額 | |||
配当 | 株式、出資金に対する剰余金の配当、利益の配当等 | 収入金額-株式などを取得するための負債の利子 | |||
給与 | 勤務先から受ける給料、賃金、賞与など | 収入金額-給与所得控除額 | |||
雑 | 公的年金等 | 老齢基礎年金、老齢厚生年金、恩給、小規模企業共済のbunkatu受け取りなど | 収入金額-公的年金等控除額 | ||
その他 | 株主優待乗車券、生命保険会社から受け取る年金、会社への貸付金利子収入 | 総収入金額-必要経費 | |||
総合譲渡 | 短期 | 資産の譲渡(売却)によって生じた所得(土地建物等、株式等を除く) 譲渡した資産の所有期間が5年以下の場合 |
収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額※2 | ||
長期 | 資産の譲渡(売却)によって生じた所得(土地建物等、株式等を除く) 譲渡した資産の所有期間が5年超の場合 |
収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額※2 | |||
一時 | 生命保険の満期金や懸賞の賞金品、法人からの贈与など | 総収入金額-その収入を得るために支出した金額-特別控除額※3 | |||
合計 | 上記の所得の合計※4 | 赤字の通算や繰越の損失など一定の調整が必要 | |||
所得控除 | 雑損控除 | 災害、盗難又は横領によって生活用資産などに損額をうけたとき |
|
||
医療費控除 | 自分、自分と生計を一つにしている配偶者や親族の医療費を支払った場合 | (その年中に支払った医療費-医療費の補てん金)-10万円※5 | |||
社会保険料控除 | 自分、自分と生計を一つにしている配偶者や親族の社会保険料(健康保険料等)を支払った場合 | その年中に支払った金額 | |||
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済の掛金、確定拠出年金(企業型・個人型)、心身障害者扶養共済の掛金 | その年中に支払った掛金の額 | |||
生命保険料控除 | 生命保険料又は掛金、介護・医療を保障する保険料等、個人年金保険料 | 支払った金額に応じて計算式に当てはめて計算した金額 | |||
地震保険料控除 | 地震や噴火又はこれらによる津波が原因となる火災、損壊、埋没又は流失等に備える保険料(旧長期損害保険料) | 地震保険料はその年中に支払った金額の合計額(最高5万円) 旧長期損額保険料は支払った金額による計算式あり |
|||
寄附金控除 | 特定寄附金(国等に対する寄附(ふるさと納税含む)、公益社団、公益財団への寄附で一定のもの、政治活動に関する寄附、認定NPO法人への寄附で一定のものなど)を支出したとき | その年中に支出した特定寄附金の額*の合計額-2千円 *は総所得金額の40%相当額が限度 |
|||
寡婦・寡夫控除 | その年の12月31日(年の中途で死亡した場合には死亡の日)の現況 寡婦=①夫と死別した後再婚していない②夫と離婚した後再婚しておらず、かつ扶養親族や生計を一にする子がいる 寡夫=妻と死別又は離婚してその後再婚していない人で生計を一にする子があること(合計所得金額が500万円以下であること) |
寡婦・寡夫控除は27万円 特定の寡婦は35万円 特定の寡婦とは寡婦のうち、扶養親族である子がおり、かつ合計所得金額が500万円以下の人 |
|||
勤労学生控除 | その年の12月31日(年の中途で死亡した場合には死亡の日)の現況において自分が勤労学生の場合で合計所得が65万円以下でかつ、その所得のうち給与所得以外の所得が10万円以下であること(給与のみの場合は収入合計が130万円以下) | 27万円 | |||
障害者控除 | その年の12月31日(年の中途で死亡した場合には死亡の日)の現況において、自分又は控除対象配偶者、扶養親族が障害者である場合。障害者手帳等を所持されている方のほか、寝たきり等で複雑な介護よ受けている人など | 障害者1人につき27万円、特別障害者があるときは1人につき40万円、 同居特別障害者は75万円 |
|||
配偶者控除 | その年の12月31日(年の中途で死亡した場合には死亡の日)の現在において、自己と生計を一にする配偶者(その年の合計所得が38万円以下に限る) | 一般=38万円 老人=48万円 その配偶者がその年の12月31日(年の中途で死亡した場合には死亡の日)現在で70歳以上の場合 |
|||
配偶者特別控除 | 生計を一にする配偶者の合計所得が38万円を超える場合 | 合計所得が380,001円~759,999円の場合、38万円~3万円の範囲での控除がある | |||
扶養控除 | その年の12月31日(年の中途で死亡した場合には死亡の日)の現在において、自己と生計を一にする配偶者以外の親族(その年の合計所得が38万円以下に限る) | ①一般=38万円 16歳以上の人で以下の②、③以外の人 ②特定=63万円 19歳以上23歳未満 ③老人=58万円 70歳以上の同居している親(自己又は配偶者の親) 48万円 70歳以上の親族で同居の親以外 |
|||
基礎控除 | 納税者(自己) | 38万円 | |||
合計 | 所得から差し引かれる金額 |
税理士 松井千春
2017,2,15
相続と不動産所得2
不動産の貸付をされている方が亡くなると、その不動産を取得した方は不動産所得が発生しますね。
この不動産所得を申告することになったのなら以下に気をつけていただければと思います。
まず、亡くなられた方が青色申告をされていて、ご自身も青色申告にする場合。
賃貸不動産を相続された方がもともと青色申告の適用を受けておられたのなら別ですが、青色申告は承認申請をしなければなりません。
亡くなられた方が青色申告だったからといっても引継げないのです。
では、その承認申請書をいつまでに提出すればいいのでしょうか?
それは亡くなられた方の亡くなった日がいつかで以下のようになります。
1月1日~8月31日までの場合・・・・亡くなった日から4か月以内
9月1日~10月31日までの場合・・・・その年の12月31日まで
11月1日~12月31日までの場合・・・・その年の翌年の2月15日まで
この期間を過ぎて提出すると、その年は青色申告の適用を受けられません。
例えば、亡くなられた日が28年5月6日なら28年9月6日までとなります。
28年9月7日以降に申請書を提出されたのでしたら、翌年の29年分からしか青色申告は適用されないわけです。
8月31日までに亡くなられたのなら期限は4か月あるのですが、10月31日の場合だと2か月しかありません。
12月31日に亡くなられたのでしたら1ヶ月半ですよね(汗)
気をつけないといけませんね。
通常の場合の青色申告の承認申請書の提出期限は、
青色申告書で申告をしようとする年の3月15日までです。
ただし、年の途中(1月16日以降)で事業を開業したり、不動産の貸付を開始したのなら、その開業や貸付開始の日から2か月以内です。
次は必要経費についてです。
相続により賃貸不動産を取得したのなら、名義変更の登記(相続登記)をしますよね。
この相続登記にかかった登録免許税や司法書士の報酬等は、この不動産所得の必要経費になります。
こちらも忘れずに計上してくださいね。
ただし、相続に関して税理士に支払った報酬は必要経費にはなりません。
賃貸不動産に直接関係する経費とはいえませんからね。
税理士 松井千春
2017,2,13