新規開業にあたって用意周到、万全にと思っていても見落としは誰にでもあります。
これから始める事業について集中し過ぎてというか、忙し過ぎてなのか、時々税務関係の書類の提出を忘れられる方があります。
特に期限のあるものについては、大変な損害になることもあります。
ひとつは、青色申告の承認申請書です。
個人事業であっても、法人であっても、この申請書を提出し忘れると、種々の得点を受けられなくなります。
開業初年度は設備投資などの為に赤字になる場合がよくあります。
青色申告の承認を受けていれば、初年度の赤字を翌年以降に繰越す事ができます。
2年目から利益がでても、この繰り越された赤字(欠損金といいます)を利益から控除できるので税負担が軽くなります。
個人の場合で3年間、法人なら10年間繰越すことができます。
私のお客様の中にも提出していなかったために、2年目からいきなりの納税でびっくりされた方があります。
もっと早くに相談に来てくれていたらと本当に残念でなりませんでした。
この他にも減価償却等の得点や個人の場合でしたら青色申告得点控除というこ控除もありますし、専従者給与といって家族に給料を出す事も可能になります。
もうひとつは消費税の課税事業者選択届出書です。
事業者は売上とともに預かる消費税額と仕入や経費とともに支払う消費税額との差額を納税するのが原則です。
ただし、消費税は通常事業開始から2年間は納税義務がありません。
つまり預かった消費税額と支払った消費税額との差額は益税となります。
でも、逆に支払った消費税額の方が多くなるときがあります。
初年度は設備投資等に費やす金額も多額のためそれに伴う消費税額も大きくなります。
では売上はどうでしょうか?
初年度は事業の認知度も低く、思うように売上げが伸びないこともあります。
この場合預かった消費税額より支払った消費税額の方が大きくなることも考えられます。
預かった消費税額と支払った消費税額との差額は、払い過ぎている訳なので還付してもらいたいですよね。
納税義務がない期間の消費税は、預かりの方が多くても納税しなくてよいのですが、支払い過ぎのときは返してもらえないということになっています。
どうしても返して欲しいのなら「消費税の課税事業者選択届出書」を期限内に提出しなければなりません。
でも、この届出書を提出すると2〜3年間は納税義務が免除されません。
通常2年間は納税義務が無かったのに届出書により課税事業者を選択すると、この選択をやめることができるようになるのが2〜3年後と縛られているんです。
なので、初年度だけをみて還付してもらうのではなく、翌年、翌々年も踏まえて検討しなければなりません。
なかなかそこまで皆さんが判断するのは難しいですよね。
2〜3年とアバウトに書きましたが、ケースによって縛りのかかる年数が違うためです。
また通常、開業当初2年間は納税義務が無いと書きましたが、1年目から納税義務がある場合、2年目から納税義務がある場合などのケースがあります。
今までに何度も開業するより前に税理士に相談してほしいと書いてきたのは、こういう事もあるからです。
折角頑張って事業を始められても直ぐに困るようなことがないように、長くその事業を続けていく為にも経営に必須の会計と税金について力強いパートナーとなる税理士を選んでください。
そしてこの会計や税に関わる経費についても事業を行う上でのコストですので、事業計画上もこのコストを含めて検討することをお勧めします。
税理士 松井千春
2017.1.5