今日(2017年1月25日)の日経新聞朝刊に、「貸家着工8年ぶり高水準」という見出しの記事がありました。
2016年の着工が40万戸を超える見通しになったそうです。
これは、相続税の節税を目的にしたアパート建設が全国的に広がっているためだと記事にあります。
節税目的を最優先にして本当にいいのでしょうか?
アパート等賃貸物件を建設すれば、土地の評価は下がります。
これは、借家人の権利部分を控除するからです。つまりは、自由に利用(売却等)できないからです。
また、現金をそのまま持っていると全額相続税の対象になりますが、土地や建物を購入すると買った価額が相続税の対象になるのではありません。
土地なら路線価や固定資産税評価額を基に評価しますし、建物も固定資産税評価額を基に評価します。
この評価の時点で購入額より下がります。
仮に1億円の土地建物を現金で購入したとして、相続税評価額が仮に7千万円だとします。ここで3割下がったわけです。
そこから借家権部分を控除するので現金1億円をもったままよりもかなり減らせます。
(実際にどのくらい下るかは物件によりますので上記はあくまでも仮定です。)
節税効果がありますが、
いずれはアパート経営をしたいと思っておられた方ならかまいませんが、節税のためにというのは「?」となります。
収益がきちんとあがるのか?
管理はきちんとできるのか?
などなど
長期的な目線で考えないと大変なことになります。
アパート経営は不労所得だからって全然働かなくていいわけではないです。
仮に管理を一括で任せたとしても、ご自身の大事な財産なので、アパートの現状を把握しなければなりません。
建物はどうしても古くなっていきますし、
入居者に不審な人物がいると困ったことになりかねません。
新築当初は入居率も高いかもしれませんが、その後安定した賃料収入を得られるかどうかは大家である貴方にかかってきます。
もしもアパート経営をされるなら、借りる側の気持ちになってその家なり部屋なりを見てください。
自分が住みたいと思わない物件を借りてくれる人はそう居ないと思います。
また、金融機関で借り入れをして建設となると、返済資金も考慮しなければなりません。
一般的な事業とちがって、失敗したからといって直ぐにやめることも難しいです。
相続に限らずですが、節税を中心に物事を考えるとおかしな方向に行きかねません。
事業を起こす方なら、何故その事業を起こしたいのか?
目先のことだけではなく中・長期で考え、全体を俯瞰できれば大きな失敗はないと思います。
税理士 松井千春
2017,1,25