税理士業務は税理士でないとできません。
その税理士業務とは、
他人の求めに応じ、租税に関して、次に掲げる事務を行うことを業とする(注1)ことをいう旨規定されています。
税務代理(法第2条第1項第1号)
税務官公署に対する申告等につき、又はその申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること(次のにとどまるものを除きます。)をいいます。
税務書類の作成(法第2条第1項第2号)
税務官公署に対する申告等に係る申告書等を作成する(注2)ことをいいます。
税務相談(法第2条第1項3号)
税務官公署に対する申告等、法第2条第1項第1号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等(国税通則法第2条第6号イからヘまでに掲げる事項及び地方税に係るこれらに相当するものをいいます。以下同じです。)の計算に関する事項について相談に応ずることをいいます。
(注1)「業とする」とは、税務代理、税務書類の作成又は税務相談を反復継続して行い、又は反復継続して行う意思をもって行うことをいい、必ずしも有償であることを要しないこととされています(基通2-1)。
(注2)「作成する」とは、申告書等を自己の判断に基づいて作成することをいい、単なる代書は含まれないこととされています(基通2-5)。
税理士の資格のない方(非税理士)が上記のような税理士業務を行うことは法律違反となります。
先日『税理士界』という業界紙に、税理士資格のない者への名義貸し行為の指標が載っていました。
名義貸しによる税理士懲戒処分の事案が増加しているからのようです。
では、その名義貸し行為となるのは?
⑴ 税理士が自らの判断で税務書類を作成していない。
⑵ 税理士が納税者から直接税理士業務の委嘱を受けていない
⑶ 税理士が報酬を直接収受していない
事例)
・無資格者が計算・作成した申告書類への署名押印だけを税理士が行う
・無資格者が下書きした申告書を税理士のパソコンに下書きそのままに入力し電子署名を行い電子申告をする
・税理士が無資格者に対して申告書の作成等を依頼し、その申告書に署名捺印を行う
・税理士が無資格者を雇用しているように偽装して、その無資格者が計算・作成した申告書に税理士が署名押印を行う
・税理士が経営している会計法人に勤務する使用人(税理士事務所の職員ではない)に、申告書の作成を指示し、その申告書に署名押印を行う
ほかにも事例が載っていましたが、上記の事例が実際に多いのだと思います。
私が独立して顧問契約を結んだお客様の中にも、無資格者が申告書を作成し、署名押印している税理士には会ったこともなかったという会社があります。
何故無資格者が申告書を作成してはだめなんでしょうか?
税理士法には税理士の使命が第1条に規定されています。
「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」
納税義務の適正な実現を図るためにも会計・税についての一定以上の知識等が必要なので資格制度があるんですよね。
仮に無資格者が長年にわたり税理士事務所等での勤務経験があり、勉強もできていたとしても、資格を持っていないということはやはり何かが足りないのだと思います。
その足りない部分のために損失を被るのは納税者です。
私のお客様も、無資格者に依頼していたことを悔やんでおられました。
税理士が、非税理士への幇助ともいうべき名義貸し行為は許されるものではありません。
税理士 松井千春
2017,3,25